ロシアの店で買い物をするときは、日本ではありえない光景を目にすることになる。モスクワなど観光地では最近はほとんどなくなったが、地方に行くと今でもソヴィエトの習慣を大切に守っている店員がまだ多い。
投げられる商品
ロシアの店では、会計の方法は2つある。一つはレジで店員に直接会計をしてもらう方法。もう一つはセルフレジで完全に自分で会計を済ませる方法だ。私たちが注意すべきなのは前者、店員にやってもらうときだ。流れとしては商品を置いて、バーコードを読んでもらい、置かれた商品を袋に入れるという、日本でもお馴染みのものだ。だが日本と全く同じというわけには当然いかない。買い物カゴに入れたままレジの台の上に置いてはいけない。客が自分で商品をカゴから出し、台に直接置く。カゴはすぐそばにあるとも限らないカゴ入れに置きに行く。台に商品を並べるとき、自分の前後の客の商品と混ざらないよう、レジに置いてある棒で仕切る。棒を使わず間隔を空けて置くというのでは意味がない。「棒で仕切っとけよ」と言わんばかりの表情を浮かべて「エータ ヴァーシー?(これはあなたの?)」と必ず聞いてくる。続いて「パケット ヌージェン?(袋はいる?)」と聞いてくる。店員がバーコードを読み取ってからが日本人にとっては見所だ。まず袋が台に置かれる。客ます袋を拾って広げ、レジの先で袋を持って待ち構える。店員は読み取った商品を放り投げる。さっと袋に入れていかないと次から次へと買った商品が投げ飛ばされてくる。あたふたしていると周りの客の視線が痛い。「何をそんなチンタラしているんだ。さっさと入れて金を払え」とでも言わんばかりの目で見られてしまう。自分がロシアのシステムにまだ慣れていないと実感する瞬間だ。
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押しつぶされる商品
筆者は日本の店の店員にいつも感謝している。丁寧に商品を扱ってくれるし、重さや堅さを考えて袋に入れてくれるからだ。忙しいだろうし、そんなに丁寧にやってくれなくてもいいですよ、とよく思っている。一方で、ロシアの店員は最悪だ。前述したが、自分で手早く袋に詰めないと、次から次へと商品が投げ飛ばされてくる。カップ麺がジェンガのように積まれるのはいいが、チップスの上に重いセリョートカ(ニシンの漬物)のパックを投げ落とされたり、そのプラスチックのパック(汁で満たされている)の上にさらに3kgのじゃがいもを置かれたりするのはいい気がしない。重さのある商品を先に読み取ってもらおうとして店員から一番近いところに置いても意味がない。店員は自分が読み取りたい物から読み取るからだ。最近は袋に入れてくれる店員も見かけるが、やはり重さは気にしない。とにかく板状のチョコレートは折れるどころかボロボロになり、重さのある商品によってチップスなどの柔らかい商品は潰される。ロシアのスーパーでは、日本とは逆に、たくさん買い物をしたときほどセルフレジに行ったほうがいい。しかし外国人にとっては、ロシアのようなスマホアプリで精算するセルフレジを使うのは難しい。専用のアプリをスマホに入れて、ロシアの銀行カードと連携させる必要があるからだ。だから観光客はほとんどの場合、このソビエト式会計を避けられないのだ。
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こっちは売ってやっているんだ
社会主義の名残のあるロシアでは、特にスーパーで日本のような接客は期待してはいけない。ときどき資本主義を感じさせる店員もいるが、まだまだモスクワでさえも古い時代の店員がほとんど。「商品を丁寧に扱え!こっちは客だぞ!」とでも言おうものなら「こっちは売ってやってるんだ!」と返ってくる、そんなイメージ。もし丁寧な対応を求めるなら、モスクワでなくてもいい。地方都市でも、少し高めの店なら接客の質はぐっと上がる。筆者自身、そうした店で店員と日本とロシアの生活の違いを笑いながら話すこともあった。
社会主義的な接客の例の一つが舌打ちだ。店には行ったものの、思うような物が見つからず、何も買わずに店を出た経験が一度くらいあるだろう。そんなときでも日本では「ありがとうございました」と言われる。ロシアではそんなことはありえない。とはいっても何も言ってくれないわけではない。ロシアでは、「買わねーなら来んなよ」とでも言いたげに、はっきりと大きく「チッ」と舌打ちをしてくれる。
舌打ちをされると最初は驚くが、慣れてくると「ロシアらしいな」と思えて笑えてしまう。むしろ、そんな素っ気ない態度の裏に人間味を感じることもある。だからこそロシア生活は面白い。
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